●門首開会式ご挨拶
本日ここに、第75回宗議会常会が招集され、議員各位には、挙って参集されましたこと、まことにご苦労様です。
はじめに、本年1月1日に発生いたしました「令和6年 能登半島地震」により、大切なご家族を亡くされ、住まいや故郷に甚大な被害を受けられた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
私自身、本年3月に被災地を訪問した際には、地震により大きな損害を受けられたご寺院やご門徒の状況を目の当たりにし、あらためてその被害の深刻さを痛感いたしました。
そのような状況の中、互いに支え合いながら懸命に避難生活を送られている多くの方々のお姿に触れ、深い感銘をお受けしたことであります。
このたびの地震により不安な日々を過ごされている全ての方に、一日も早く安穏なる日常が取り戻されることを心より念じております。今常会は、かかる時代状況を見据え、宗門の進むべき方 向性を定める、様々な重要施策について審議されることで あります。議員各位におかれては、公議公論を尽くされ、その本分を全うされるよう念願します。
●宗務総長演説要旨
【能登半島地震のお見舞い】
本年1月1日に発生した能登半島地震は能登地方を中心に甚大な被害をもたらし、今なお非常に厳しい状況が続いており、ここにあらためて、被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。私自身、1月下旬に能登へお見舞いに伺いその被害を目の当たりにし、日頃の言葉では間に合わない、無力感を覚えたことです。宗門として本願念仏のみ教えに出遇うことのできた身としての 仏教的・大乗的支援を宗門各位と模索し、形づくってまいりたく思っております。
【「声を聞き、声〈御名〉に生きん」
〜われら今、「同朋社会の顕現」を課題として】
宗門は「同朋会運動」発足以来、教団問題、部落差別問題、靖国問題等の重大問題をくぐり、「宗憲改正」をもって、今の教団の形を享受しております。「宗憲」前文に「すべて宗門に属する者は、常に自信教人信の誠を尽くし、同朋社会の顕現に努める」と「宗門存立の本義」を表し、宗門人の使命と責任を表現しています。今宗門の実情を受け止める中で、再度その本意を確かめ直さなければならないと思わされます。
「同朋社会の顕現」について、池田勇諦先生は慶讃法要に際し「南無阿弥陀仏のこのいのちに回帰する、根源的連帯に帰る」とこの一点を強調されました。一言で申せば「いたみ」であります。それこそが「宗憲改正」の背景にある先達のご苦心であり、言葉にすることができなかった「声」と「こころ」に眼を向ける必要があります。人と人の衝突と分断を直接の背景として持つ現宗憲は、「いたみ」を内包しているのです。
その「いたみ」ということについて、立野義正先生は「正常化の罪」それは「本来を見失わせる罪」であると語り、宗門活動の根にある問題点をご指摘なさっておられます。私たちは、同朋社会の顕現という一句を、いたみをもって受け止め、受け取り直さなければなりません。そして具体的な課題として「常に自信教人信の誠を尽くす」この言葉に提起されています。「自信教人信」を宗祖が『教行信証』にいただかれる際、その読みを「みずから信じ、ひとを教えて信ぜしむる」と記しておられます。このことは「愚禿釋親鸞」の責任としての表現であり、稀有最勝の教えに遇えた「ひとり」としての責任。南無阿弥陀仏の声を聞いた、声が聞こえた者としての責任が、そう読ませたのです。では、私たちの責任、使命とは何か。それは「声を聞き、声に生きる」ことであります。「声なき声を聞く」、すなわち「自らの内なる声」、また他者 の「言葉にならない心や思念」というものを、互いに想い合い、聞き合うこと。それこそが「同朋社会の顕現」 を誓った宗門に属する者の使命、その第一歩であると思います。
その声というのは、先ゆかれた大切な人。その人が大切に手を合わせていたお内仏。御同行が相集い支えてきた本堂。その根源に「南無阿弥陀仏の声」がある。そのことを慶讃法要で両堂に鳴り響いたお念仏の声、地震を経験された能登の方々が、私にあらためて教えてくださいました。「声を聞き、声に生きる」とは、「声を聞き、御名に生きる」ことであります。
どうか共に、「仏願の生起本末」を聞いてまいりましょう。一体なぜに、この自分に南無阿弥陀仏が届けられているのか。その「いわれ」に耳を澄ませることを、あらゆる宗門活動の根底に堅持いたしましょう。そして一つの行事、一つの数値、一つの文章の奥に、どのような「声なき声」があるのか、背景があるのか。そうしたことを分かったことと済まさずに、静かに耳を傾けてまいりましょう。私はそれが「教団を尽くす」ことであり、願われる宗門の形を作っていく確かな一歩であると思います。相共に南無阿弥陀仏の「すがた」を一生かけて尋ねていく。そのことをもって「同朋社会の顕現」、宗門存立の本義を現代に表さんと念ずる次第であります。
【2024 年度の主な取り組み】
2024 年度の主な宗務について、3 点申し上げます。
1、宗務改革
2、是旃陀羅問題の課題共有
3、教区慶讃法要
【むすびに】
仏法の僧伽とは、やはり「これからつくる」という話ではないのでしょう。どこまでも僧伽は、道を求める中で自ずと召されるものであります。その出来事も、どこか遠くに描かれるものではなく、この私に起こる。私が起こすのではなく、南無阿弥陀仏によって起きるのだと、そう教えられました。能登の現状をはじめ、現代社会は各方面で非常に危うい状況に至っております。「いたみ」と、「無窮の志願」を、共に同じ時代を生きる我らとして、「声を聞き、御名に生きる」、一つひとつの出来事を大切に紡いでいけたらと願っております。
●財務長演説要旨
2022年度宗派経常費御依頼の収納状況は、御依頼総額49億8,234 万円に対し、54億 2,906万8,995円、率にして 108.9%の収納をいただきました。本年度の経常費御依頼につきましては、御依頼総額50億2,400万円に対して、2024年5月28日現在での収納額は49 億7,580万3,801円であり、率にして99%の収納をいただいております。
【2022年度決算】
歳入額は82億4,102 万円となり、予算に対して106.8%の収納率となりました。
また、相続講金は4億1,043万円、率にして9%の増収となっております。懇志金は29.3%の増収、その中でも、納骨志は1億4,868万円の増額となっております。
【能登半島地震支援の現況と 2023 年度補正予算】
能登半島地震の支援の現況と2023年度補正予算について申し上げます。宗派見舞金としては、能登教区に対して4,000 万円、新潟教区に対して200 万円、富山教区に対して100 万円、金沢教区に対して200万円をそれぞれ給付いたしました。
【2024年度予算の概要】
2024年度一般会計の予算総額は、経常部・臨時部合わせて87億1,390万円、2023年度予算に比して4億1,770万円増額して編成いたしました。
また、臨時部歳出においては、2023年度から3ヵ年度を目途に慶讃事業を継承する慶讃事業継続費として、 慶讃事業推進資金から慶讃事業刊行物の発刊資金の繰入金、青少幼年教化支援、そして各教区慶讃法要厳修に対する助成等、総額 9,987万円の予算を編成いたしました。
【真宗大谷派所有の重要文化財指定建物について】
2019年9月30日に、真宗本廟の主要伽藍である御影堂、阿弥陀堂、御影堂門等の6棟が、2023年9月25日には、大寝殿、白書院などの諸殿・諸門、並びに内事建 物群の17棟が国の重要文化財に指定されました。
真宗本廟境内の建物は、「本廟護持」の精神のもと、今日まで大切に護られてきました。それらの建物の価値が評価されることは、大変喜ばしいことであり、さらに修繕・維持経費に対して補助金が得られることは、今後の宗門財政に大きく寄与すると考えております。
【不動産活用】
高倉幼稚園、高倉会館将来構想については、現在宗務審議会「真宗本廟を中心としたグローカルデザインに関 する委員会」において審議を重ねております。高倉幼稚園に関しては、専門家による作業部会での綿密な調査・ 研究による報告を受け、本年4月より幼保連携型認定こども園の「東本願寺たかくらこども園」として、その新たな歩みをはじめております。高倉会館の将来構想に関しましても、具体的な協議をすすめ、2024年度中に一 定の報告をいただきたいと考えております。
【大谷祖廟総合整備事業】
大谷祖廟境内全域の安全対策やバリアフリー、老朽化した建物の改修や参拝者の混雑解消を図るべく、大谷祖廟の総合的な整備計画を立案するため、昨年12月に宗務審議会「大谷祖廟総合整備に関する委員会」を設置し、整備計画策定のための調査・審議をいただいております。
総合的な整備準備の一環として、今後必要となってくる経費を確保するため、大谷祖廟総合整備事業準備積立金の設置を提案するとともに、一般会計臨時部において積立金へ1,000 万円繰入れる予算措置を講じました。
【決算審査の充実】
去る2月21日に両会議長の諮問機関「決算審査に関する検討会」より報告書を受け取りました。予決算審査の連動性の観点から予算審査における参考資料の充実と、決算承認の早期化を図ることについては、宗門運営の精度向上を目指す意味で当局も同様の願いを持っております。報告書を真摯に受け止め、実効性と即応性を重視した決算審査の充実に万全を期してまいります。
【行財政改革に向けた具体的な視点】
今後宗派財政をどのように考えていくのかという意味からも、新たな視点を持ちつつ行財政改革の推進を図らなければならないと受け止めております。
① 資産管理 ② 職員確保 ③ 不測の事態への備え
④ 会計構造の課題 ⑤開教の視点
急速に変化する時代社会にあって、宗務改革の推進はいよいよ必要不可欠になってまいりました。「行財政改革検討委員会報告」の趣意を体として、宗派を取り巻く環境を直視し、具体的な行財政改革の検討を行い、可能なものから順に積極的に着手してまいります。
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