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第80回宗議会(常会)

  • 執筆者の写真: 真宗興法議員団 真宗大谷派
    真宗興法議員団 真宗大谷派
  • 2 日前
  • 読了時間: 42分

第80回宗議会(常会)開会式での門首挨拶


 本日ここに、第80回宗議会(常会)が招集され、議員各位には、挙って参集されましたこと、まことにご苦労様です。

 はじめに、昨今、世界各地において自然災害が相次ぎ、また国家間の緊張や武力衝突も依然として続くなど、人びとのいのちと暮らしを脅かす状況が広がっております。これらの現実に深い悲しみを覚えるとともに、被害に遭われたすべての方々に衷心よりお見舞いを申し上げ、一日も早い平穏の回復を念じ上げる次第であります。

 さて、宗門におきましては、各教区・各別院において慶讃法要が厳修される中、宗祖が顕かにされた本願念仏のみ教えに立ち返りつつ、あらためて私たちの歩むべきあり方が問われております。

 このような時代状況のもと、今常会は、宗門の将来を見据え、様々な重要施策について審議されることであります。

議員各位におかれては、公議公論を尽くされ、その本分を全うされるよう念願します。

(2026年5月28日)




2026年 宗会(常会)宗務総長演説(要旨)

2026年5月28日


宗門の原形「聞法者の交わり」の再生へ

-念仏を「オコタル アナドル」を超えて-


 議員各位には、ご参会、誠にご苦労様でございます。

 今常会開会にあたり、はじめに宗門の常なる課題、同朋会運動の実際問題について申 し上げた後、次年度の主な宗務の基本方針について申し上げます。

【 はじめに 】

 私どもは、幸いにして宗門の生命線である「同朋会運動」の歩みを共に賜っておる者 であります。今から64年前の1962(昭和37)年、「同朋会の形成促進」という 表題をもって、即ち宗派、教団を改めて一つの会として、「真宗同朋会」として受け取 り直す。そして、一人ひとりが如来によって目覚めさせられることを期す運動、「同朋 会運動」が始められました。

 この同朋会運動の意義については、4年前の常会において、宗務総長の役をお受けし た私の所信として申し上げた通りでありますが、一言で申せば、それは「真宗再興」で あります。「真宗再興」。人間の本当の救いの道、「浄土の真宗」をこの現代にこそ再生 する。それを担う者が我々宗門人一人ひとりである。「真宗再興」の志願に立たれた無 数の念仏者によって、今日まで進められてきたものが、同朋会運動であります。そして その歩みは、私どもに重要な課題をもたらしてくださいました。教団問題、差別問題、 靖国問題をはじめとする、多くの大切な「問いかけ」を賜ったこともまた、同朋会運動 のおかげであると申して良いかと思います。


【 宗門の原形の確かめ 】

 そして何より、「教団問題」を潜る中で、「いたみ」をもって獲得したのが、現「真宗 大谷派宗憲」であります。

 宗門の最高規範「宗憲」は、むろん法規でありますから、普段はほぼ意識に上らない ものかもしれません。しかしながら、間違いなく我々の先達が、文字通り身命を賭して、 「いたみ」を抱いて紡ぎ出した規範であり、また同朋会運動を法制度として、精一杯表 現したものであります。つまり、我々は常に、この「宗憲」の精神に立ち返って、宗門 運営について考え、また、担う必要があります。

「宗憲」にはご承知のとおり、「前文」に宗門生成の歴史、宗門人の責任と使命とが 格調高く表現されております。以前の演説でも触れた箇所ですが、現今の宗門を憶う時、 今一度、宗門各位と確かめ合う必要を強く感じた一語がございます。

それは「聞法者の交わり」という一語であります。「聞法者の交わり」。この語句は前文に、このように表現されております。「宗祖聖人の滅後、遺弟あい図って大谷の祖廟 を建立して聖人の影像を安置し、ここにあい集うて今現在説法したもう聖人に対面して 聞法求道に励んだ。これが本願寺の濫觴であり、ここに集うた人びとが、やがて聞法者 の交わりを生み出していった。これがわが宗門の原形である」。ここで注意したいのは 「本願寺の濫觴」と「宗門の原形」の使い分けです。

「ここに集うた人びとが、やがて聞法者の交わりを生み出し」という一文、「人びと が」から「やがて聞法者の交わり」となっております。「人びと」が「聞法者」に変化し ている。つまり宗門の原形は、単に「人びと」ではないのです。宗門の原形は「聞法者」 である。聞法者、即ち仏法を聴聞し、仏法に統理され、仏法に生きんとする、そういう 「人びとの交わり」が「宗門の原形である」と明記してあります。併せて、前文には同 様のことが、他2箇所ございます。曰く「この宗門は、(中略)聞法者の歓喜と謝念と によって伝承護持されてきた」のである。「わが宗門の至純なる伝統は、(中略)教法を 聞信し、教法に生きる同朋の力によって保持されてきた」のであると。

 つまりこれは、「聞法せよ」との呼びかけであります。「聞法しているのか」と。果た して誰に向けた呼びかけでしょうか。当然、私「ひとり」への呼びかけであります。


 元より、我々は同朋会運動の中で、常にぶつかる「壁」は、自分の握っているモノサ シであると教えられて参りました。それは、あらゆることに対して「答えを持っている」。 あらゆることを「理解し・把握し」ようとする、そういう人間誰しもが持つ根源的な課題です。つまり我々の日常感覚、『歎異抄』で云われる「日ごろのこころ」(『真宗聖典 第二版』780頁)であります。もちろん、「理解」や「把握」は、日常では必要なこと であります。ただし、その同じ感覚、「日ごろのこころ」で、仏法をも理解し、把握し ようとする、ここに言わば「根本的な問題」があります。どうしても自分で握ろうとす る。しかも、場合によっては、その握ったものを、他に対して誇ったり、自分を守る盾 にしたり、或いは他を攻める道具として利用する。そういう痛ましい「傲慢さ」を備え ている存在が、我ら凡夫であると、私たちは宗祖から教えられてきました。

 根本言である「南無阿弥陀仏」は、理解する対象ではありません。むろん、把握でき るようなものでもありません。平野修先生は、そのことについて「如来・仏さまを、我々 が見つけるのではありません。凡夫にそんなことはできません。如来・仏さまが、我々 を探し出し、見つけ出す。方向が逆です」(法蔵館『親鸞の信の深層』要約)と、大変巧みな表現をもって教えてくださいました。「方向が逆である」と。これはもちろん、そ れならば「逆に行けばいい」ということではありません。それでは、自分が肯定した「自 分の考えの逆」に過ぎない。そうではなく、我々は聞法生活の中で、その教えに「はか らずも」気づかされる、ひっくり返される。「はからずも」であります。具体的には「南 無阿弥陀仏の声」を聞き合う中で、自分の考えは逆であったと「知らされる」。鈍いも のであった、恥ずかしいことであった、逆であったと「教えられる」。それしか「道」 は無いのであります。我々は「知らされて知る以外に知り方を持たない者」であります。

 「宗憲」前文に戻りますと、「宗門の原形」であり、またその宗門を今日まで伝承護 持し得たもの、それは単なる「人びと」ではなく「聞法者」とある。そして「宗門の至 純なる伝統」も「聞法者」によって保持されてきたと。つまり、今、我々一人ひとりが 「聞法者」の自覚を生きる、そういう課題と覚悟を持たねばならないということです。 そうでなければ宗門は、宗門である意味を失う。単なる人の集まりという、それ以上の 意義を見出すことができない団体組織になってしまいます。

 そういう「危機感」をこそ、私は本日、皆さまと共有したいと思います


  宗祖親鸞聖人は、『教行信証』化身土巻の冒頭において、「懈慢界」という言葉を記し ておられます。「亦『大無量寿経』の説の如し。即ち疑城胎宮、是なり」(『真宗聖典 第 二版』380頁)と続く箇所です。この「懈慢界」とは、「自己了解、自己満足」といっ た意味かと存じますが、先日『教行信証』「坂東本」を拝見しておりましたら、その「懈 慢界」のところに宗祖は左訓(カナ)を刻んでおられました。カタカナで「オコタル ア ナドル」という書き込みをされている。「怠る、侮る」と。私はそれを目にしまして、 今更でありますが、親鸞聖人に申し訳なさを感じます。

 「聞法者」や「聞法」という言葉を耳にしても、「もうそれは分かっている」といっ た感覚が、我々の胸中に、果たして無いと言い切れるでしょうか。しかしながら、私は この一点こそが、現在のあらゆる課題の「大本にある問題」ではないかと思います。昨 年この場で、私は重要課題である「宗務改革」とは、我々一人ひとりの「意識改革」か ら始まるものと申し上げました。しかし、自分で自分の意識改革はできません。当たり 前のことです。そのようなことは不可能であり、言ってみれば、そのために本願の名号 が、「南無阿弥陀仏」が、この現代にまで伝えられて来ているわけであります。


【 真宗同朋会構想 -世界に応える教団- 】

 さて、今そのことを気づかせてくれた「宗憲」の精神、その本である同朋会運動。そ の本旨は決して個人的な領域の課題ではありません。運動発足時の『真宗』1962(昭和 37)年12月号の巻頭言に「人類に捧げる教団」と表現されています。それをもう 少し具体的に、当時の訓覇宗務総長が「真宗同朋会」という構想の趣旨を披歴してくだ さっている文章を、先日読む機会がありました。これは1963(昭和38)年の議会、 つまり同朋会運動発足後1年が経った折の演説です。

 この演説には、「全人類にこたえる教団」という、とても大きな、私などの日常感覚 では、ちょっと受け取り難い、大いなる表題が付されております。「全人類にこたえる 教団」です。その中で、訓覇総長はこのように述べておられます。

 「世界に応える教団の使命に鑑み、同朋会構想を打出した次第でありますが、その後 の社会の動きは我々の願いのまちがいでなかったことを証明しておるようであります。 特に同朋会発足後「人づくり」ということが我が国の合言葉のようになって来ましたが、 教団の立場から申すならば、およそ信仰的人間を生み出すところに教団の意義があると いうことは、釈尊以来の仏教教団の伝統であって、(中略)教団の社会に対する使命の 重大なることを痛感する次第であります」と。


 同朋会運動の具体的、現実的な目的は、当初から「信仰的人間」の養成です。即ち「聞 法者」を無限に生み出すところに教団の意義があると。併せて、当時の社会状況につい てこう述べられています。「今、日本の現状をかえりみますと信仰自身は混乱し、科学 もそのいのちともいうべき批判精神が顧みられず、いたずらにその結果だけが、功利と 享楽とのために求められている」と。

 「信仰」と「科学」の問題。この押さえなどは、全くもって、現在我々が直面してい る問題そのもののように聞こえます。そうして「信仰がひろく人類とともに生きる公開 性を持つ」、「合理性を健康に開く」、そういう「信仰を持った人間を生み出すところに、 教団が人類の社会に応える使命がある」と重ねて強調されています。

 やはり、「聞法者」という問題なのです。つまり「聞法者が生まれているのか」とい う、この問題を抜きにするならば、何をどうしようと「歩み」にはならない。宗門は、 その使命を果たすどころか、存在意義すら失ってしまう、ということなのです。それほ ど、私には「宗憲」前文に出ておりますこの「聞法者」という一語は重たい。とても読 み過ごせる言葉ではないと感じます。

 そして、演説の終わりに訓覇総長はこう仰っています。「我々の教団は、同朋会推進 によって、大きくかつ深くこの現代の要求に応えんとするものである」と。これを再読 いたしまして、「宗門人の責任と使命」は既に、ここに言い尽くされているものと、私 は受け止めました。

 五濁の世、無仏の時、私どもは教えと出遇い、「御名を聞き、御名に生きん」という 真宗人の基本に立ち返る。その「聞の一道」において、如何に自分が「怠り、侮ってい るのか」を知らされ、気づかされる。「教化」と言いますものも、その「気づかされた」 という有り難さが、自然と周りの人に伝わるということなのでしょう。

 言うまでもなく、自らが「聞法者」であるかどうかは、自分で決めることではありません。しかし、その人の「すがた」というものは「他者からは見える、すがた」であります。大事なことは全て「人のすがた」で伝わります。親鸞聖人は法然上人に、唯円房 は親鸞聖人に、「聞法者のすがた」を見たに違いない。自分の一生を決める「出遇い」、 「値遇」の歴史的事実。それが浄土真宗の生命であります。「この人は間違いなく仏法 に生きておられる」という、その驚嘆と感動の心が、南無阿弥陀仏の声を今日に届け、 その声と共に、宗門を私たちにまで手渡してくださったのであります。

 私「ひとり」が聞かずして、一体誰が真宗仏教を証しするのでありましょうか。様々 な取り組みも、かかる諸仏如来の呼びかけ、厳しい問いかけを胸に刻んで、進んで参る 所存であります。


【 自信教人信の門首像 】

 さて、そのようなことを思います時に、まず私の心に浮かびますのは、真宗本廟の晨 朝に日々出仕をされ、仏祖崇敬と親鸞聖人の御真影へのお給仕をされる、門首の「すが た」です。それは、「宗憲」において「僧侶及び門徒の首位にあって、同朋とともに真 宗の教法を聞信する」と定められた門首像を、今正に私の目の前で、体現しておられる 大谷暢裕門首、また、それに先立つ大谷暢顯前門の「すがた」であります。

 前門におかれては、現「宗憲」の下で24年間、念仏者として我々に範を示し、その 重責を担ってくださいました。そして、その後ろ姿に「報恩の願いに生きることを教え ていただきました」と表白し、門首を継承された大谷暢裕門首がおられます。正に、この度の門首継承は、「人のすがた」を通してなされたものであったと、私は受け止めて おります。その「すがた」を伝えるべく、この度、大谷暢裕門首による著作『ボン・ア ミーゴ -ブラジルで聞いた念仏の声-』を発行する運びとなりましたことを、皆さま に改めてご報告したいと思います。

 この著作を通して、私共が皆さまにお伝えしたいことは、「ブラジルの門徒の中でお 育てをいただいたことが、何よりも自分の宝です」と私に語ってくださった、一人の念 仏者として、門徒と共に歩みを続けておられる、暢裕門首の真摯な「すがた」でありま す。それは、遠いブラジルの地における「聞法者の交わり」の中で育まれた、正に「自信教人信」の「門首のすがた」と言えます。

 私は、今回の門首の著作を通して、今一度、大谷派の未来へと伝えるべき「宗憲」の 精神をどこまでも重く受け止め、自信教人信の誠を尽くす門首像を広く国内外にお示し し、ひいては「聞法者の交わり」としての教団像を次世代に手渡して参りたいと願って おります。

 以上、私の同朋会運動推進の決意を述べさせていただきました。


 引き続き、次年度の諸施策の方針について、細部は提案趣旨、予算及び内局提出資料 に譲り、主なものについて、その要旨を申し上げます。


【 歎異の教団 -信心の課題としての「是旃陀羅」問題- 】

 これまで縷々申し述べて参りました、聞法者の具体相とは何か、それは如来の教法に 照らされ、自らの「愚かさ」に頭が下がった「人のすがた」でありましょう。宗祖親鸞 聖人は、正に自らの愚かさに頭を下げ続けられた方であります。

 そのような宗祖をいただく、我が宗門でありますが、その正依の経典の一つである『仏 説観無量寿経』の序分にある「是旃陀羅」の語を、差別的な解釈をもって「説き続けて きた」という歴史を背負っています。これは、経典を無自覚に読み続けてきた我々大谷 派僧侶の責任であります。2013年に部落解放同盟広島県連合会から我々に提示され た「是旃陀羅」の語に関する問題は、「経典を一人ひとりの僧侶がどのように戴いているのか」、そのことを「門徒から厳しく問われた」ことであると、私自身は受け止めて おります。その課題をもって、昨年度末から宗務審議会「「是旃陀羅」問題に係る経典 読誦に関する委員会」を立ち上げ、大谷派の法要式における経典読誦の意義と、教団の 歴史的罪責を受け止めた上での、法要式における経典の読法の在り方について諮問し、 先日答申をいただきました。その答申を重く受け止め、今後は儀式指導研究所での具体 的な議論を進めて参ります。

 また、「是旃陀羅」問題における、これまでの我々大谷派僧侶の罪責に向き合いながら、僧侶・門徒が共に学びを深めるため、全組における「是旃陀羅」問題学習会を展開 して参ります。この学習会は、差別的な誤った解釈の下、『観経』を法事の場で読み続 けた我々僧侶が、門徒各位に対して頭を下げ続けるという、止むことのない新たな歩み に他なりません。

 「是旃陀羅」問題を通して、一度下げた頭は決して上げない、そのような「歎異の教 団」としての大谷派の姿勢を世に示し、次世代の大谷派教師に伝えていかなければなり ません。そして、「愚禿」と名乗られ、生涯、人間の愚かさに決して頭を上げることな く、下げ続けられた親鸞聖人の歩みを「我が歩みとしたい」という教団。新たな教師は、 その教団のすがたを大切に受け止め、大谷派教師として、教化活動に従事していただき たいと心から願っております。そのような人の誕生こそが、「人類の社会に応える使命」 を持った、真宗大谷派なる教団の未来につながっていくものであると信じます。


【 世界に開く真宗の教え -海外開教について- 】

  先程、「全人類にこたえる教団」との、訓覇総長の演説の表題を紹介させていただき ました。我々がいただく浄土真宗の世界は、人類普遍の真理であります。1951(昭 和26)年、暁烏敏宗務総長の時、「世界に擴げよ念佛の聲」と力強く語られた演説を 思い出します。『宗門各位に告ぐ』と題された「暁烏総長第一声」は、「世界に開かれ た開教の願い」であったのだと、私は受け取っております。

 それから70数年が経った本年1月、ここ本山での教師修練の課程を経て、英語とフ ランス語を母国語とするお二方が、真宗大谷派教師となられました。その教師修練のレ ポートには、「A seeker settles into the reality of their ignorant and does their best to realize the preciousness of every moment(「求道者は、自らの愚かさに気 づかされ、全ての一瞬一瞬を大切なものとして生きようとする」)」、そして「I pledge to encounter each being as Amida’s only child.(私は、あらゆる衆生を阿弥陀の 一人子として見出していくことを誓います)」、そのように記されています。見事な信 仰告白ではありませんか。こうして、浄土真宗の教えが国境を超えて伝わった、私はそ の瞬間に立ち会うことができたのです。

 経済至上主義は人びとの貪りの心を助長し、自らの正義と相手の正義が音を立ててぶ つかる戦争は、各地で後を絶たず、我が国においても、武器輸出規制が緩和される等、 様々な人間の危うさが露呈する「無明の闇」のただ中にある今日にあって、お二人は国 境を越え、また言語を超え、真宗の教えに出遇い、自ら大谷派教師として歩み、更に、 新たな海外の教師を生み出す身となられた。何と嬉しいことでありましょうか。

 「真宗同朋会」を指して、「それは「人類に捧げる教団」である。世界中の人間の真 の幸福を開かんとする運動である」と、高らかに宣言して始まった同朋会運動が、今正 に2人の聞法者を介して、世界へ、更に広がる時を迎えたのであります。

 そして本年は、ブラジルにおいて第14回「世界同朋大会」が「同朋 -ボン・アミ ーゴ- 多様性を生きる」をテーマに開催されます。そのような年に当たり、「聞法者 の交わり」が、ますます世界に広がるよう、海外における教師資格取得の要件整備や、 充実した真宗の学びのための環境整備など、国内外の開教に力を尽くして参る所存です。


 ここで、教師養成に関連して一点、大谷専修学院について申し上げなければなりませ ん。大谷専修学院については、引き続き、学院の運営体制を整える必要があるため、学 院生の募集を中止しております。学院での学びを希望されておられる方には、大変ご迷 惑をおかけしておりますことに対し、ここに改めてお詫び申し上げます。 まさに、「聞法者の交わり」を深める学びの場である大谷専修学院の再開に向け、司 法の場における判断を見定めながら、内局一同、引き続き努めて参ります。


【 『同朋新聞』 -教えを伝える教団の公益性- 】

  さて、教団の存立意義は「人の誕生」、そのことに尽きます。これまで縷々申し上げ てきたとおり、「聞法者の交わり」が、我が大谷派教団の原形であります。人から人へ と、仏法は脈々と伝わってきたのです。

 その伝統に立って、仏法を慶ぶ人の声を『同朋新聞』で表現し、それを伝えることに よって、人間として真に実りある実生活を送っていただく一助としていただきたいと、 願っております。お寺は開かれた場であることを伝えるとともに、「人類平等の救いを 全うする」人類普遍の教法を伝えることこそが、宗教法人たる大谷派教団の持つ、普遍 的公益性であります。

 時代社会の状況は刻々と変化し、生活スタイルや念仏相続のあり方も大きく変化して います。転居された門徒、葬儀でお寺と初縁を結ぶ門徒、先行きの見えない社会の中で 悩み苦しむ若者等、様々な人びとに念仏の教えを届けるため、人類普遍の法である真宗 の教えに真向かいになりながら、『同朋新聞』の配布・配信の拡大に、より一層力を入 れて参ります。

 ところで、『同朋新聞』6月号の「読者のお便り」欄をご覧になったでしょうか。そ こには、門徒が門徒の「お便り」に反応し、改めて記事の内容を深く確かめた、という 経験を踏まえ、『同朋新聞』を通して、門徒が本山とのキャッチボールをすることで、 宗門を元気にしたい、という投書が掲載されています。

 改めて、本日ここにご参会の議員各位、及び全ての宗門人に申し上げます。まずは身 近なところから、例えば、都会に転居されたお子さんやお孫さんに『同朋新聞』を配布してください。そのような、お一人お一人の取り組みによって、一人、また一人と、あ なたの「すがた」を通して、教えが届くことになります。「私一人」の足もとにおける 同朋会運動推進の具体的な一歩として、ぜひとも、取り組んで参りましょう。


【 宗務改革 -「聞法者の交わり」を次世代につなげるために- 】

 次に、「聞法者の交わり」を次世代につなげるため、最早選択肢ではなく、必須の課 題となった行財政改革について申し上げます。

 2024年4月に提出された「行財政改革検討委員会報告」に基づき、宗務審議会を 設置し、協議いただいた答申を踏まえ、内局の責任において鋭意取り組みを進めており ます。また、明年2月には、第5回「門徒戸数調査」を実施いたします。

 財政に関する事項については、財務長演説に譲りますが、私からは現状の受け止めと、 今後向かうべき方向性の一端について述べさせていただきます。


 まず、寺院・教会の現状であります。門徒戸数の減少といった量的な変化に加え、「正 信偈のおつとめ」ができる門徒の減少といった質的な変化。更には、報恩講の参詣人数 の減少や規模の縮小。そして、4割以上の寺院・教会が将来的な寺院の存続に不安を抱 え、3割以上の寺院で後継者に該当する者が見つかっていない、といった厳しい現場の 状況が、第8回「教勢調査」から明らかになりました。

 人口減少や移動社会の進展といった、社会状況そのものの変化は、我々の手には、ど うすることもできません。しかし、そのような状況の中にあっても、「聞法者の交わり」 が途絶えることのないよう、包括法人として何ができるか、議員各位と今後、更に議論 を深めて参りたいと考えております。

 そして、「教区及び組の改編」の成果を述べるには、時期尚早ではありますが、教区 が広域化することによって広がった、新たな「聞法者の交わり」がきっかけとなり、地 域の特性に応じた、きめ細やかな教化のあり方を広い視野で考える、この度の改編がそ のような機縁になることを願います。


 中央宗務機関といたしましては、次年度以降、真宗教化センターが、その機能をより 一層発揮できるよう、「しんらん交流館」に設置されている機関(教学研究所、解放運 動推進本部、青少幼年センター及び企画調整局)のみならず、他の教化関連部門をはじ めとした、宗務機関相互の連携を更に深めて参ります。また、教区との情報交流を図り ながら、一ヵ寺一ヵ寺に求められる教化施策の充実を目指し、教化の現場における「聞 法者の交わり」が益々広がるよう、取り組みを進めて参ります。

 なお、「教化研修計画の基本方針」については、教区教化委員会の任期に合わせた「3 ヵ年度一体型」の2期間目が、次年度より始まります。教化の目的は「一人の念仏者の 誕生」、そのことに他なりません。その目的を果たすための手段である教化施策を、「教師養成・僧侶の学びの充実に資する学習基盤の整備」、「多様性に根ざした僧侶・門徒の 学びの充実や僧侶の社会貢献・寺院の公益性」、「子ども・若者教化の取り組みの充実」、 「真宗本廟と寺院の往復関係を意識した参拝文化の再構築」、「仏事を縁とする転居門 徒・潜在層との関係接続」、「報恩講に帰結する教化活動の充実と教化の現場の活性化」 の6つの方向性に整理して、取り組んで参ります。

 向後3ヵ年度において、それらの取り組みを有機的に連携させ、教化の現場の活性化 に資するよう、真宗教化センターをその紐帯的役割を果たす機能・機構として位置づけ、 展開して参ります。

 具体的な施策の方向性については、内局提出資料の「2026~2028年度 教化 研修計画の基本方針」をご覧ください。


 また、門徒の状況に目を向ければ、門徒数は減少しつつも、一定数の新たな門徒も存 在しています。その多くが「通夜・葬儀の執行寺院探し」、「年忌法要の執行寺院探し」、 「納骨堂探し」といった、亡き人を弔うご縁からのものであります。つまりそれは、まだ寺院と関係を結んでおられない方と、葬儀や納骨をご縁として、新たな関係を結ぶこ とができる可能性がある、ということであります。

 このことを踏まえ、宗派の具体的な取り組みとして、「大谷祖廟総合整備事業」に加え、真宗本廟における新たな納骨の取り扱いについて議論を深めて参ります。

 まず、大谷祖廟は、言うまでもなく親鸞聖人の御廟所であり、真宗本廟と大谷祖廟は 「両廟」として護持されてきました。そして、「宗憲」前文に謳われるように、大谷祖 廟は、我が大谷派教団の濫觴、つまり、「はじまりの一滴」であります。江戸時代中期 には、真宗門徒の納骨所としての祖廟の歴史も始まり、門徒が聖人の廟所に集い、「聞 法者の交わり」を深めていったのであります。そのような大谷祖廟を次世代に、確かに 手渡していくため、必要な整備を鋭意行って参ります。

 本整備事業遂行にあたり、内局といたしましては、宗門各位に丁寧な説明を行い、真 宗門徒がこれまで大切に崇敬護持してきた歴史を継承して参りたいと考えております。

 

 また、所謂「潜在門徒」をはじめとした、まだ寺院と関係を結んでいない方々に加え、 親鸞聖人や真宗本廟、大谷祖廟等を入口として、宗派と関係を持つ方々を「門徒に準ずる者」として位置づけ、納骨という仏事を通して、念仏に出遇っていただき、その方々 との関係を、それぞれの地域の寺院・教会へと繋いでいきたい。そのように願っており ます。そこに「聞法者の交わり」が始まり、一人の念仏者が誕生する。そのような「開 教の視点」を持った「場の創造」を期した取り組みを行って参ります。


 以上、次年度に向けた主な取り組みについて、その方向性の一端を述べさせていただ きました。


【おわりに】

  本日はこの場におきまして、改めて、と申しますか、今まで見過ごしてきたこと、或 いは「分かったこと」にして片付けていた「聞法者」という「人のすがた」の問題を、 各位と共有させていただきました。

 これには一つ、私にとって大事な想い出がありまして、それは平野修先生からお聞き したエピソードであります。平野先生が出遇われた蓬茨祖運先生が、大谷大学の授業に 際して開口一番、こう仰ったと。

 「人間は何から生まれますか」と学生諸氏に問いかけられた。すると何人かの学生が 「タンパク質からできている」とか「アメーバなどの原子生物ではないか」などと答え たそうです。そういう学生の声を聞き終えた蓬茨先生は、ニコッと笑われて、一言、「人 間は人間から生まれます」と。「人間は人間から生まれます」。そうなのだと、平野先生 はハッとさせられたと。聞法者は聞法者から生まれる。その「聞法者の交わり」が宗門 の原形です。

 したがいまして、この私が「聞く」以外に、宗門に「道」は付かないということであ ります。

 

 重ねて、仏恩の深重なるを念ずる次第であります。以上で終わります。ご清聴、深く 感謝いたします。

以 上




2026年 宗会(常会)財務長演説(要旨)

2026年5月28日


 宗務総長演説の宗務執行の基本方針に基づき、財務の方針について申し上げます。

まずは、2025年度宗派経常費御依頼の収納状況について申し上げます。御依頼総額50億6,284万円に対して、2026年5月25日現在での収納額は48億7,882万7,323円、率にして96.3%の収納であります。厳しい経済状況の中、全国の寺院ご門徒の皆様より宗門の活動に深いご理解をいただき、格別の御懇念を賜っておりますこと、厚く御礼申し上げます。

 加えて、令和6年能登半島地震に対する救援金の勧募につきましては、全国より継続的なご支援をお寄せいただいております。2025年度は能登教区へ1,000万円を給付し、これまで被災教区へ総額2億8,651万4,874円をお届けいたしました。被災された方々に思いを馳せ、救援金をお届けくださっておりますことに、あらためて心から御礼申し上げます。

【2026年度予算の概要】

 はじめに、2026年度予算の概要について申し上げます。

2026年度一般会計の予算総額は、経常部・臨時部合わせて119億 1,990万円、2025年度予算に比して29億6,797万円増額して編成しております。

この予算総額の増額は、2026年度から2030年度の5会計年度の計画で実施する総額49億7,000万円の大谷祖廟及び東大谷墓地総合整備事業の財源として、平衡資金の一部、22億円の使用と、財政調整資金の運用に伴い、これを一般会計臨時部に予算計上していることが主な理由であります。


<大谷祖廟及び東大谷墓地総合整備事業と平衡資金の使用>

 先ず、大谷祖廟の総合整備につきましては、予ねてより境内擁壁・急斜面地の危険箇所、雨水排水不良、大谷祖廟庫裏が構造上の問題を抱えていたため、2022年度からの事前調査を皮切りに、宗務審議会の議論を経て、2025年度に設置した「大谷祖廟及び東大谷墓地に関する総合整備委員会」において慎重に審議を重ね、去る4月に事業概要を中間報告として取りまとめていただきました。その報告を受け、本常会に「大谷祖廟及び東大谷墓地総合整備事業特別会計収入支出総計画案」及び「大谷祖廟及び東大谷墓地総合整備事業特別会計条例案」並びに関係する条例案等を提案いたしております。

 宗務総長が演説で述べられたとおり、真宗本廟と大谷祖廟の両廟は聞法者の交わりを深めてきた場であります。この総合整備事業は、宗祖聖人墳墓の地たる歴史と真宗門徒の納骨の伝統、親鸞聖人の教えに出遇う場を継承していくための歴史的大事業であり、納骨を縁とした宗派の開教事業としての展開と、祖廟における宗派財源の増収を目指すものであります。全国の寺院及び教会、僧侶、門徒をはじめ、広く一般社会にも本事業の願いを周知し、本派の将来的展望に立ち、重大な事業として取り組んでまいります。

 本事業は、本堂内陣をはじめ伝統建造物整備工事、現庫裏の解体と大谷祖廟会館の建設工事、東大谷墓地事務所の納骨堂施設(以下、東大谷納骨堂)への改修工事、バリアフリー対策工事等を計画しております。さらに、大谷祖廟の社会的役割を発信していくため、『(仮称)新 大谷祖廟史』を刊行する経費、そして納骨を大切なご縁として関係を継続していくための基盤となる宗派版関係者情報管理システムの改修経費を含む総計画であります。

 当局としては、これを重大かつ緊急を要する事業と受け止め、真宗本廟両堂の御修復事業と同様に、平衡資金の一部を使用することを本常会に提案いたしております。平衡資金約72億2千万円(2025年度末残高見込み)のうち22億円を本事業として使用するため、新たに設置する「大谷祖廟及び東大谷墓地総合整備事業推進資金」に繰入れを行います。

 加えて、特別会計に墓地整備準備金から総計6億円を繰入れ、東大谷納骨堂の冥加金相当額を東大谷墓地特別会計から総計10億円回付、一般会計から総計3億円回付いたします。

 さらに、大谷祖廟は、本願寺の濫觴の地であることに鑑み、本事業を全国の別院・寺院・教会が挙げて取り組むべき一大事業として成し遂げていくために、特別賦課金「大谷祖廟総合整備賦課金」を賦課させていただきます。この特別賦課金額については、後に述べます「宗費賦課金に関する審議会」の答申に示された賦課号数の廃止に伴う一律による金額設定の願いを受け止め、寺院・教会は年額1万円といたしております。なお、別院については等級による賦課金の20%で算出しております。

 また、本年の『同朋新聞』9月号には本事業の概要を掲載し、11月号からは「大谷祖廟ものがたり」を連載していくなど、この事業の趣旨を丁寧にお伝えし、納骨者、墓地使用者、寺院・教会、企業・団体等へ広く懇志奨励及び本堂仏具等の指定寄付の勧募に努めてまいります。

なお、2026年度は、2027年5月を目途に総合整備の実施設計を行う他、東大谷墓地事務所の東大谷納骨堂への改修工事に着手してまいります。


<財政調整資金の設置>

 次に、新たに設置する財政調整資金について申し上げます。

 この財政調整資金を設置する理由は、予算編成時において当該年度の歳入額に左右されることなく、確実に事業を実施する財源を確保することにあります。

 具体的に申し上げますと、1つには、断続的に実施する諸施設の大規模営繕等に係る財源を、長期展望に立って確保し続け、必要な営繕を着実に実行すること。2つには、3ヵ年度一体型の教化研修計画の中で特に集中する事業の予算をあらかじめ確保すること。3つには、臨時的に必要となる支出をはじめ、当該年度予算の収支均衡を確保するための財源とするものであります。

 これらにより、宗派運営の安定を欠く、単年度の収支均衡に傾注した予算編成から脱却し、継続した資金の積立と、集中して実施すべき施策の実行を可能とする会計構造をもって、より安定的に宗派運営を支えてまいります。

 この財政調整資金の設置にあたっては、その原資を確保するため、宗派の各種資金の一部を統合いたします。具体的には、建物営繕のため毎年度の繰入と使用を行っている「真宗本廟諸施設営繕積立金」、宗宝及び宗史蹟の保存管理に使用する「宗宝宗史蹟保存管理資金」、代替地の取得等に使用する「不動産預り」について、その所期の目的も継承しつつ資金を統合いたします。加えて、第1種共済特別会計の閉鎖以降、保管してきた「第1種共済特別会計閉鎖金預り」と2025年度をもって事業が終了する「宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃事業推進資金」の残額を統合し、財政調整資金の原資にいたします。


<2026年度一般会計の予算編成>

 次に、2026年度一般会計の予算編成においては、自主財源の増収及び歳出抑制を上回る速度で進む物価上昇によって、一層厳しさを増す中、持続可能な宗派財政の確立に向けての資金の積立に重きを置きました。

 これにより、繰越金約2億7,650万円に諸施設等の営繕・保存管理に資する3億円を加えた総額5億7,650万円を確保し、御修復以降積立が行われていなかった「真宗本廟両堂等御修復積立金」に5,000万円を、被災した教区への復興支援及び特別教化交付金の財源である「災害対応準備金」に6,000万円を、「財政調整資金」に4億6,650万円を、それぞれ繰り入れる予算編成を行いました。

 加えて、一般会計経常部の歳入は自主財源の増収を図り、奉仕団の上山促進による「同朋会館冥加金」、東本願寺オンラインで取り扱いを開始する「授与礼金」、渉成園の拝観及び諸施設の公開活用による「寄付金」、資金の効果的な保管と利息を集約した「受取利息」(雑収入)を主な増額内容として、前年度比2億7,352万円の増額(繰越金除く)の予算編成であります。

 経常部の歳出については、2024年度決算及び現況に注視して事業の見直しを図り、学事・教学事業の刊行物のWEB公開への移行、東本願寺奨学金の給付内容の見直し、警備体制の見直しに伴い減額編成しております。また、『同朋新聞』に係る予算は、配布拡大を期し増額編成しております。その他、1年の準備期間を経て、2026年度より新たな基準に基づく教区交付金を交付してまいります。

 これらの改革や見直しが予算に反映されたことにより、御依頼額の抑制を図りながら宗派運営の水準を維持した予算編成を達成することができました。

 次に、臨時部における財政調整資金に関して申し上げますと、歳入においては、9億6,487万円を資金から繰入れ、歳出においては、統合した資金の目的を継承する「真宗本廟大規模営繕費」、「渉成園保存整備事業費」、「不動産取得費」の計8億4,525万円を計上しております。また、3ヵ年度一体型の教化研修計画の2026年度集中施策として「是旃陀羅」組学習会助成1,140万円を計上し、臨時的予算として、別院本堂修復事業への特別助成を行う「別院特別助成」2,050万円、相続講賞典の見直しに伴い2027年度導入する新規肩衣を調製する「相続講賞典(新規)」6,500万円、「大谷専修学院訴訟対応」1,700万円を計上しております。なお、資金からの繰り入れた額には、2026年度予算編成における収支均衡を保つための3,500万円が含まれております。


【宗務審議会及び条例による委員会の答申を受けて】

 次に、行財政改革を推し進めるため協議いただきました宗務審議会「寺院・教会の施設に係る新たな復興共済制度の検討に関する委員会」、「真宗本廟崇敬護持のための財源の検討に関する委員会」及び「宗費賦課金に関する審議会」からの各答申の受け止めについて申し上げます。

 先ず、宗務審議会「寺院・教会の施設に係る新たな復興共済制度の検討に関する委員会」については、令和6年能登半島地震に対する共済金の給付により復興共済積立金が大きく減少した現状などを踏まえ、新たな復興共済制度について慎重かつ多角的な議論が重ねられ、去る2月に答申書を提出いただきました。

当局といたしましては、必要に応じて民間保険の集団扱火災保険を活用し、第2種共済を持続可能な制度とするため、本常会に「共済条例の一部を改正する条例案」を提案いたしております。なお、具体的内容の周知徹底と理解促進を図るため、2026年度は全国各教区へ説明に出向くことを計画しております。

 次に、宗務審議会「真宗本廟崇敬護持のための財源の検討に関する委員会」については、真宗本廟における「(仮称)東本願寺納骨」の実現に向けて検討が重ねられ、去る1月に答申書を提出いただきました。

 当局の受け止めは、宗務総長の演説のとおりでありますが、まだ寺院と関係を結んでおられない方々、宗派と関係を結ぼうとされる方々を、積極的に受け止める開教の視点に立った教化を推進することを、宗派内にその趣旨を明確に示すため本常会に「門徒に準ずる者の取扱に関する特別措置条例案」を提案いたしております。

 また、答申に示された宗派版関係者情報管理システムによる情報発信と管理、そして社会的信頼に応える仏事相談・東本願寺納骨に関する問い合わせ窓口の整備も含め、「(仮称)東本願寺納骨」の速やかな開始に向けて、取り組みを展開していく所存であります。なお、本件は、宗派が直接的に門徒を抱えることを意図するものではないことを申し添えさせていただきます。

 さらに、同じく答申に密接に関わる重要課題として示された「相続講賞典内規」(院号・真宗本廟収骨・肩衣等)及び大谷祖廟納骨志の見直しに関しては、まさに今がその時期だと受け止めており、本年7月には教務所長へ伝達した上で、年度当初の教区及び組の諸会議等を通じて、2027年7月1日の改正施行に向けて丁寧に説明してまいる所存であります。

 なお、東京都練馬区の東本願寺真宗会館での納骨事業は、東京教区と連携のもと、いよいよ2026年度から本格的に開始することになりました。今後、この取り組みをとおして、新たな関係性を構築しながら、さらなる首都圏開教施策を推進してまいります。

 次に、条例による「宗費賦課金に関する審議会」については、前回2017年3月の答申を踏まえて議論され、去る4月に答申書を提出いただきました。

 答申書は、長年、宗会及び宗門世論から指摘されてきた賦課号数の廃止と、全国の寺院・教会が等しく担い支えるべき宗派運営の相当額から導き出された一律による寺院賦課金の設定金額、そして僧侶賦課金に関しては、増額の金額変更が示されました。答申書では特に新たな視点として、僧侶賦課金は、全ての僧侶が自ら担う意識の醸成を図る必要性が付言されています。

 当局においては、この答申に基づき2027年度からの導入を目指し、宗費賦課金に関する説明を丁寧に行ってまいりたいと考えております。


【第5回「門徒戸数調査」について】

 次に、明年2月に実施の第5回「門徒戸数調査」について申し上げます。

 今回の調査においては、さらなる公平性、公正性、透明性の確保の観点から、全教区において統一された内容での公開とするべく「門徒戸数調査に関する条例の一部を改正する条例案」を提案いたしております。また、調査実施に先立ち、調査内容に齟齬が生じることがなきよう、中央調査委員が全教区に出向き、教区に対する説明会を実施して万遺漏なく調査を推進してまいります。

 この門徒戸数調査は、寺院・教会・別院に所属、または関係する門徒戸数を社会状況の変化に応じて的確に把握することによって、効果的な教化施策を展開するための調査であるとともに、集計される数値は公正かつ公平な御依頼割当基準を策定するための最重要要素となるものであります。宗門人一人ひとりによって支えられなければ、宗門の持続可能な運営は成り立たないと思料しており、何卒ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。


【境内建物と不動産の活用】

 次に、境内建物と不動産の活用について申し上げます。

 去る2025年8月27日付で、「本願寺水道水源池」が琵琶湖疏水関連施設の一つとして国の重要文化財に指定されました。本願寺水道は、明治期の両堂再建に併せて先達が真宗本廟を何としても火災から守りたいとの願いが結実したものであり、その出発点であるこの「本願寺水道水源池」が国の重要文化財に指定されましたことは、宗派としても大変意義深いことであると受け止めさせていただいております。

 御影堂・阿弥陀堂をはじめ、真宗本廟の重要文化財諸殿群、大谷祖廟、渉成園とともに、法義相続の願いに支えられてきた歴史の魅力を広く一般社会に発信し、真宗大谷派東本願寺という知名度に加え、宗派との接点をもっていただく機会を創出してまいります。なお、本常会においては、この「本願寺水道水源池」を基本財産として設定するべく「真宗大谷派所有建物の基本財産設定について議決を求める件」を提案しております。

 また、京都市上京区梶井町の土地(旧了徳寺敷地)につきましては、基本協定書に基づいた協議がまとまったことから、京都府立医科大学の運営法人である「京都府公立大学法人」とドナルド・マクドナルド・ハウス事業実施のための土地使用貸借契約を締結すること、並びに「医療法人社団行陵会」と病院事業実施のための事業用定期借地権設定契約を締結することを、財産管理審議会並びに2025年9月1日招集の参与会・常務会において可決いただきました。その後、公告及び据え置き期間を経て、「医療法人社団行陵会」とは2026年1月27日に、「京都府公立大学法人」とは2026年3月31日にそれぞれ契約を締結いたしましたことから、本常会に2066年6月30日を契約満了日とする真宗大谷派所有土地に係る財産処分について承諾を求める2案件を提出いたしております。

 次に、真宗本廟境内には23棟の国指定の重要文化財建造物が存在していますが、これまで大規模な修理が行われていない諸殿群を維持していくため、文化庁や専門家の助言指導を受け、建物の現況把握、修理の優先順位、日常管理を示し、向後の公開・活用方針を定めようと、2025年度から3ヵ年度事業として国庫補助を得て重要文化財保存活用計画の策定を進めております。2026年度は、一般会計臨時部に949万円の国庫補助金と1,950万円の策定業務委託料を予算計上し、引き続き取り組んでまいります。

 また、築約50年の宗務所(東本願寺会館)及び築約30年の視聴覚ホールの大規模な修繕や設備更新にあたり、2024年度より「宗務所及び視聴覚ホールの営繕並びに境内設備の改修等に関する委員会」を設置し、将来に向けて必要な課題の抽出と工事内容について審議してまいりました。宗務所の営繕は、主に外壁改修・給排水設備改修・防災設備改修として一般会計臨時部に2億円を予算計上し、2026年10月頃の着工、そして視聴覚ホールについては、漏水対策・空調更新・エレベーター更新・照明LED化を中心に、一般会計臨時部に4億5,000万円を予算計上し、2026年12月頃からの着工を目途に、委員会の管理監督のもと取り組んでまいります。併せて、2026年度から2029年度の4ヵ年度で、国庫補助を得て、総額約3億の重要文化財の防災施設整備事業に着手いたします。2026年度は設計を行うため、一般会計臨時部に国庫補助金として591万円、境内防災施設整備として1,250万円を予算計上しております。

 次に、渉成園西側に位置する正面役宅跡地(京都市下京区廿人講町)は、効果的な活用方針が決定するまでの間、渉成園参観者の利便性を踏まえ、コインパーキングとして暫定活用しておりますが、モダン建築として注目される「重信会館」(築約95年)とともに、さらなる収益を得て、且つ真宗本廟・渉成園との連動や波及効果のある活用方途を模索するための事業提案を募集いたしました。2026年度は提案事業者の中から優先交渉権者を選定し、重信会館と隣接地の活用方途を財産管理審議会で審議してまいります。また、高倉役宅は、2027年1月以降の解体を予定し、そのための経費として一般会計臨時部に5,000万円計上しております。役宅解体後の同地並びに高倉会館の利活用についても、引き続き、財産管理審議会で検討してまいります。

 次に、渉成園については、年間の拝観者数15万人を目標とし、夜間ライトアップを開催するなど、より多くの方に喜ばれる催事等を企画してまいります。また、開園から3年が経ち多くの人々が集うようになったお東さん広場を縁として、2026年11月に「Matsuri Crossing Kyoto × Brazil 2026」の主催に加わり開催いたします。本事業は、国際文化交流事業であり、文化の還流と再接続、多様な人々が集う開かれた場の創出、さらには京都駅周辺のにぎわい創出にもつながる取り組みであります。引き続き、宗派内外の協力を得ながら真宗本廟、お東さん広場、重信会館、渉成園を一体としての利活用と魅力の発信に努め、訪れた方々に対して真宗大谷派(真宗本廟)との縁を深める取り組みを進めていきます。


【財政の健全化に向けての成果と課題】

 最後に、2026年度予算編成を経て、あらためて宗派の財務方針について申し上げます。

 1990年代初頭のバブル崩壊後、日本が長期にわたる低成長と慢性的なデフレ(物価下落)に苦しんだ期間を「失われた30年」と称されています。その間は、企業がコスト削減(賃金抑制)を優先し、消費者が安価なモノを求めるマインド(デフレマインド)が定着した結果、物価も賃金も上がらない「均衡」が続きました。

 経常費御依頼総額、相続講賞典内規、賦課金等はいずれも30年以上据え置かれてきましたが、それによって宗派財政の均衡が保たれてきたことは、そのような時代背景があったからこそと思われます。しかし、2023年頃より本格的なインフレ時代に突入した時代状況にある現在、その見直しを考えなければならない時を迎えております。

 厳しい財政状況の中にあって、ここ数年一歩ずつではありますが、宗派所有不動産の積極的活用、リスクを抑えた効果的資金保管など、さまざまな財政改革に取り組んでまいりました。特に次年度から繰越金に頼らない会計構造の一環として財政調整資金を設置する理由は、先ほども申し上げたように、年度ごとの歳入額の多寡にとらわれない会計構造と着実な資金の積立を目指すことにありますが、同時に宗派の財政体力を見定めるための指標を得るためでもあります。次年度は、大規模営繕が控えておりますので、資金が一旦大幅に目減りすることになりますが、この先、資金減少が続くようであれば、財政の抜本的な見直しが必要となってきます。

 現在のところ、現状の財政規模による宗門運営を維持する方針でありますが、2026年度予算編成にあたる中で、これ以上の歳入の大幅増は見込めず、かつ歳出削減に至ってはほぼ限界値にあると実感しています。固定費を除く、いわゆる事業費の精査もかなり細かく行いましたが、宗門がいのちとしてきた同朋会運動の衰退は避けなければならないことに鑑みると、簡単に選別することもできません。つまり、既に現在の予算規模では、十分な宗派運営が難しい状況にあることを認めざるを得ません。各寺院・ご門徒の経済状況は依然として厳しいという、現実も理解していますが、教団の使命を果たすために最低限必要な金員を確保し、確実に宗務を執行していくことが当局の責務であると重く受け止めております。したがいまして、財政調整資金の運用状況を見極めながら、経常費御依頼の総体を見直すタイミングを見定めてまいりたいと考えております。

 また、行財政改革の視点として働きやすさ改革にも着手してまいりました。つまり、職員の労務環境の改善でありますが、社会情勢に似合う初任給の増額と若手職員の給与の見直しは、財政難を理由に見過ごすことはできないこともあり、断行に踏み切ってまいりました。

 一方、人件費の総額抑制は宗務改革の中で注視されることではありますが、現状の業務量の多さに加え労務上のコンプライアンスなどの点から短期間で効果を望むことはできません。しかしながら、2026年度以降は、超長期に亘り経験のないコスト構造の変化が、宗派財政に影響を及ぼすと予見されることから、包括法人として担うべき役割を維持・向上するため、AIの活用を含めた業務の合理化と簡略化、また職員の養成や配置の適正化を図るという視点をもって調査・研究を行い、行財政改革をさらに推進してまいりたいと考えています。

 また、財政改革の次なるステップとして、宗派予算・決算書の表記や分類について見直しを行ってまいります。現行の宗派会計の予算科目は、真宗大谷派宗憲の示す収入名称(冥加金・礼金・相続講金・同朋会員志金・懇志金等)に準じた款区分と、予算科目の継続性に重きを置いてまいりました。しかしながら、変化が著しい昨今、より宗派財政の課題を明らかにする予算編成と予算審査のためには、科目を整理しなければならないと考えております。予算書で、経常費御依頼額充当の予算総額、宗務所主催の教化事業の予算、主な事業の収支などを表すことによって、宗派財政の課題や改革の進捗を共有していこうとするものであります。これは、単に前年度と比較する予算編成では改革は進まないとの実感によるものであり、2026年度から検討に着手してまいります。

 さて、2026年度からいよいよ大谷祖廟に関する総合整備事業が始まりますが、その内容は、経費面において非常に大きな規模の事業となります。大谷祖廟は、年間を通して多くの参拝者が足を運んでくださいます。その理由の一つには、東山の静寂な自然に囲まれ、四季折々の風景や京都の伝統行事、そして歴史の息吹を肌で感じられる地であるということもあります。そして、大谷祖廟に参拝される方々との接遇の中で感じることですが、ほとんどの方は大切な方との死別という悲しい出来事を通し、「私に仏法を伝え、いのちの尊さや本当の生き方を考えさせてくれる大切な仏縁」としてのはたらきに出遇いたいという思いで訪れておられるのです。

 3年前の宗務総長演説でも述べられたことではありますが、あらためて大谷祖廟の成り立ちを確かめさせていただきます。

宗祖親鸞聖人が、往生された後、大谷に納めた遺骨をさらに吉水の北の辺に、遺骨を掘り渡して、仏閣をたて影像を安置したのが、はじまりであることは、今さらいうまでもありません。そしてそれが、我々の帰依処とする真宗本廟の源流であります。

 宗祖親鸞聖人の恩を忘れず、自らの命を顧みずに諸国在住の多数の門弟が群れをなしてはるばる大谷に参詣し、廟堂で涙を流して遺骨を拝む。亡くなってから長い年月が経っても参詣は絶えず、姿はなくても教えが耳に残っていると、『報恩講私記』に記されています。

 聖人に直にお目にかかり、直説の教えをいただいたと変わらぬ感激に咽んだ(むせんだ)先達の精神が、今日まで教団として存することができた原動力でもあります。宗祖が本願念仏の教えを明らかにされたこと、そしてその教えを確かに現在の私たちにまで伝えてくださった先達の願いは、私たちの想像をはるかに超える尊いものであったと思われます。身命を顧みず、まさに命懸けの一大事であったのでしょう。そのようなことを思いつつ、「宗祖や先達に対して恥じることがないくらい精一杯のことができているのか」と、自分の在り方を自問することがあります。このたびの大谷祖廟に関する総合整備事業は、私自身まさに如来、宗祖、先達からの「恩徳」として受け止めて、その完遂に向けて身を粉にして取り組まなければならないと感じております。

 慶讃法要を機に「真宗再興」を一つのキーワードとして掲げてまいりました。宗門を取り巻く厳しい状況にあって、取り組まなければならない課題は山積みであります。しかし、「真宗再興」を成し遂げるためには、一つ一つを地道に取り組み、皆が実感できる改革へと昇華するよう、全宗門人が危機感を共有し、一丸となって推し進めてまいりたいと切に念願いたします。

以 上

 
 
 

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